蕎麦打ち奮戦記

◆蕎麦打ち、3年目を振り返って (2006年)
この一年を振り返ると取り留めのない過ごし方をしたようでもあり、視点を変えれば幅を求めた悪戦苦闘の期間でもあったように感じます。自己評価ですから当てになりませんがいろいろと感じたことをつらつらと綴ってみます。


■蕎麦打ち
一年目、二年目の延長線上で右肩上がりに上達するものと考えていた蕎麦打ちの技術は予想を外れ足踏み状態と云ったところです。
いろいろと原因は考えられますが最初に上げられるのはイメージほど身体が動いてないことです。最近、他のことでも度々感じることがあります。日常生活の基本を考え直すことである程度はカバー出来ると思いますが気侭すぎてなかなか実行に移せないのが現状です。次ぎに上げられるのは身体が動かない分をカバーする為に蕎麦を打つ回数を増やすことですがその前に処理しなくてならないことが多すぎた一年でしたのでやむなく半減しました。

(親子そば打ち体験教室)
個人的に開催している出張蕎麦打ちも出来ず、またTokyo蕎麦塾主催の蕎麦打ち教室とシニアマンションでの蕎麦打ち会の参加も減ってしまいました。
前述の理由で打つ回数は減りましたが新たな出会いと経験もありました。
地域の公的施設で夏に「親子そば打ち体験教室」が開催されました。偶然のきっかけでそのお手伝いをすることになり、元々の講師お一人に誘った仲間が加わり、その3名に施設のスタッフ2名と共に対応しました。
当初の募集では10組の予定でしたが倍の申し込みがあり、午前と午後の2教室を開催。20組65名程の親子さん達で親子2人の参加や子供さんと両親の3人、はたまた一家総出で5人のご家族もいらして賑やかなことでした。
大方は主役の小学3年生から6年生の子供さんが熱心にそば粉と向き合っていましたが中には子供さんから麺棒を取り上げ主役に躍り出るご両親も居てそれはそれは賑やかで楽しい教室でした。悪戦苦闘の末完成した蕎麦はこちらで用意した汁と共に持ち帰って頂きました。蕎麦を通じ普段とは違った親子の対話や触れあいがあり、講師であるよそのおじさんとの会話もあったりで短い時間でしたが子供さんにとって夏休みの良い思い出が出来たのではと考えてます。

(二本打ち)
「親子そば打ち体験教室」の元々の講師であるOさんは二本の麺棒によるデモ打ちでした。三本打ちの場合、一本をのし専用の麺棒とし他の二本は巻き取り専用の麺棒として使いますが二本打ちの場合その時々の状況に合わせ、二本の麺棒は共にのしと巻き両方の機能を持つことになります。この打ち方は何度か見たことがありましたが目の当たりにしたのはこの時が初めてでした。Oさんにお伺いしたところご実家の家業が蕎麦屋で先代のお父さんから教わったとのことでした。体験教室の主目的は蕎麦に関わることを学ぶことではありませんでしたが参加者に渡したテキストの不備や講師陣の事前打ち合わせの不足などを感じ、反省した一日でもありました。

(年越し蕎麦)
前年に比べると半減してしまった蕎麦打ち。それを取り戻すように年越し蕎麦は前年の倍を打ちました。これまで1.2kの粉を一玉として打ちましたがこれを1.5kに増やすことで作業時間を短縮することが出来ます。道具類との兼ね合いもありますが巻き棒はこの時のために長い麺棒を自作しました。あとは技術の問題です。1.0kと1.2kの差はさほど感じませんが1.5kになると丸出しも四つ出しのサイズも一段と大きくなり均一の厚さに伸す作業は時間も丁寧さも根気も増します。8玉12kを打ちましたが全ての状態を均一にするにはかなり際どいところが出てしまいます。他人さまへお渡しする蕎麦ですから不揃いのところをはね、それが自宅分となります。
昨年は顔見知りしかもお招き蕎麦打ち又は出張蕎麦打ちで手打ち蕎麦の茹で方なども見ていただいてますから安心してお渡しできます。
今回はお招き蕎麦と出張蕎麦打ちが出来なかったお詫びも含め多く打ちましたが予想以上のご希望を頂き、上手に茹でられ伸びない内に食べてもらえたか気掛かりとなりました。


■道具類の製作
使い道のない木鉢台 進化させると展開が面白そうな篩器 評価の高い打ち台セットです。
木工そのものは好きな方です。時間さえ取れればオリジナルの道具の製作や工夫は楽しみの一つとなります。しかしややもすると過剰なアイデアとコストを抑える工夫に走りすぎるきらいもあります。手持ち材料を活かしたり細部の金物探しに走ったりする過程の面白さが先に立ち、役に立ちそうもない物を造ってしまうこともあります。その一例が今回ご紹介した木鉢台と手回し篩器です。
参考になる道具類はWeb上で沢山紹介されていますがオリジナルなアイデアに拘り完成するまで試行錯誤が続きます。アイデアの段階で物になるかどうかの判断をしてから製作に取り組みますが材料の特性や手持ち工具の制約から細部の加工を変更する場合も出てきます。それらも含めて面白さがあります。

進化する打ち台 その2)
二年目に製作した「打ち台」は画像によるご紹介と製作のヒントとなるディテールについて掲載しましたが数名の方々から更に詳しい情報を求める問い合わせを頂きました。それにお応えするため製作図を作成しましたのでご利用の場合はご遠慮なくお知らせ下さい。その後の改良点としてはパーツ同士を緊結するボルトセットに座金を追加しました。これは当初の予想以上に角材へのワッシャのめり込みが大きく、それを防ぐためです。18mm角の小さな座金をホームセンターで見つけましたが24mm角程度は欲しいところです。

この打ち台を進化させ、のし板と打ち台を一体化させて収納時(脚を折りたたんだ状態)に麺棒と切り板も納めてしまうものを二例図面化してみました。
のし板サイズは940×940mmと940×1230mmの二例です。
お問い合わせのメールは こちら からお願います。




■共同蕎麦栽培 自家製粉
記憶を辿るのがやっとと云えるほど遠い昔に蕎麦の実を触り石臼で挽いたことがありますが一度きりのことであり、その行為を思い出すのみです。
新に蕎麦の実に触れたのはごく最近のこと、花は一度も見たことがありません。そのような訳で栽培と製粉は蕎麦打ちの中では最も未知の分野に入っていきます。つい最近まで栽培とか製粉に関することは遙か彼方の事だと思ってましたがTokyo蕎麦塾が企画している蕎麦の共同栽培に参加することが出来ました。参加と云うほど大それた事は無理でしたがスタートの種蒔きと最後の脱穀の二回のみとなり、目的としていた蕎麦の花が咲く頃は参加できず白い花は見逃してしまいました。頂いたそば畑の画像を貼り付けます。殻のついた玄蕎麦の画像は共同栽培で収穫したものです。



■素人そば打ち段位認定山都大会(2006年3月25日)
(再会)
全国麺類文化地域間交流推進協議会(略して全麺協)の段位認定制度によると二段位を受験する資格は初段位の認定から一年以上の経過を要しますから最短でこの山都大会ということになります。二段位の受験者は41名の方々が各地から参加しましたがその内の30名は昨年の山都大会での初段位認定の方々です。受験者も応援団も審査員、運営スタッフの皆さんも昨年と同じ方々が多く会場はアットホームな雰囲気すら漂っていました。控え室での会話や移動中の車・電車での会話は蕎麦の話ばかりではありません。方言混じりのお国自慢は耳を傾ける方も愉快になります。これも全麺協が目的としている蕎麦を通じた交流の一環だと感じた大会でした。

(受験対策)
蕎麦を打つ技術はこの一年で上達しているとは考えられず昨年の受験経験を参考に工夫をしてみました。
一つは道具の工夫です。車で駆け付ける受験者は持ち込み可能な道具類の一切を運び込むことが出来ますが手持ちの電車移動では限度があります。又多くを持ち込まず対応するのも技術の内だと考えました。
先ずは麺棒です。伸し棒は使い慣れた長さ900mm、径26mmとし、巻き棒は昨年秋に自作した長さ1050mm、径26mmを使用する予定でしたが長さ900mm、径29mmの巻き棒に変更しました。径が大きくなる程麺体に加わる力が広くなり四つ出しや巻き伸しが容易になる理由からです。次は20番メッシュの篩を持参することにしました。これは受験要項にもありましたが昨年の会場側で用意されていた篩が50番のメッシュでした。目が細かいと篩いに時間が掛かり廻りの受験者が水廻しに入っているのに私だけがまだ篩いに手間取った苦い経験がありました。普段は30番を使用してますが少しでも時間を短縮するために新たに購入し、持参しました、、、、が、何と会場でも同じ20番の篩いが用意されていました。
駒板は幅270mmの大きい方にしました。これは最近気付いたことですが手持ちの駒板の中では幅の広い方が麺体を回転させることなく真っ直ぐに切り進めることが出来るからです。次ぎに用意したのがタワシです。これは手を洗う為に用意されたポリバケツの中で指先にこびり付いたそば粉を洗い落とすためのものです。いつもですと流水で洗いますから差ほど必要ありませんが素早く綺麗に洗い落とすのに役立ちます。
次は白い前掛けにポケットを着ける改造です。これは手拭きのタオルを入れるためのものです。昨年は黒いポケット着きの前掛けでしたが粉の汚れが目立たないように白いものに変えました。その他の道具類は何時もと同じです。
技術的な改善カ所は上げたらきりがなく又簡単に修得出来るものでもありませんから一月程前から一定の時間配分を考えた練習をしました。制限時間の40分をフルに使い、準備から片づけまでの各行程の時間を決め、無駄な動作を排除したり動作が綺麗に見えるように気をつけ、各行程での作業に余裕を持たせるようにしました。また途中の作業で手こずった場合最後の切りから片づけまで何分で処理できるかについても練習しました。その結果切りに3分、片づけに2分が最短でしたが切り幅を揃えるには少々無理な時間です。認定基準の切り揃い率70%の見方によっては際どいところです。

(本番)
審査員は昨年度と同じ唐橋委員長を含め5人体制です。初段と二段の違いがあるのかもしれませんが昨年度に比べると各行程を各審査員は念入りにチェックしてるようでした。
左の画像は四つ出しを終え本伸しに入ってから巾だしをしているところです。審査委員長がチェックシートを片手に手元をじっくり審査しているようです。
意識していつもより丁重に麺棒を転がしたつもりですがこの画像を見る限り麺棒の位置が左へ寄りすぎ、左手の位置も伸し板の端にあり自ずから右手の位置も適切ではありません。邪念があったのでしょうね〜いつもの動作では出てこない手付きをしているのが分かります。
右の画像は角の処理をしてるところですがやはり麺棒の位置が左寄りとなっています。いろいろ原因を考えてみましたが普段使用している伸し板サイズと試験場の伸し板のサイズに300mmの差があります。普段ですと麺体の端が伸し板の端ギリギリに来ますから自然と伸し棒も左手の位置も伸し板をはみ出た動作をしていました。その癖が原因ではないかと考えてますが定かではありません。
画像から判断すると意気込みと気合だけは充分だったようです。
今回特に注意したのが加水率です。水廻しに使用する水を48%準備しました。これは昨年の経験からくるもので用意されるそば粉の性質によるものです。昨年は纏めに入り丁度良い固さと判断して練りに入ると徐々に麺体が締まり、伸しに入ると麺体の端がややひび割れることがあり、繋がりにくい厄介なそば粉のようでした。今回の受験当日は気温も高く順番がくる午後からは湿度もかなり低くなり一層の注意が必要です。加水を慎重にし、捏ねと練りで乾燥を防ぐため手を洗う回数も増やすことにしました。最終的には47%の加水と判断しましたが後ほど公表された加水率も46〜48%でした。水回しの後の行程は無理をすることなく打ち粉を少な目にし、常に麺体の状況をチェックしながらいつも通りの蕎麦打ちを心がけました。
大きな失敗は審査委員長の前で綺麗な端の処理をするために行きすぎた麺棒使いがその部分の伸し厚を薄くしてしまっていたようです。たたみに入る前に伸し厚を確認するために麺体を巻き取った麺棒を持ち上げると角の端の部分が20cm程三角形に千切れ落ちました。
想像もしなかったアクシデントに一瞬戸惑いましたがもう一度、本伸しの最後の段階へ戻り、切れ端を繋ぎ合わせ再度のし棒でならしてからたたみの行程へ入りました。そのカ所が少し不安な気もしましたが切りの作業も無事に通過、生舟に移し換えるときも切れることなく納めることが出来ました。過去に経験のない出来事でしたが時間的に余裕があり処置は上手くいったようです。
今回の審査結果は昨年度に比べるとかなり厳しものでした。昨年度の初段受験者は全員合格しましたが今回は53名の受験者に対し10名が不合格。二段の場合、昨年度は33名の受験者に対し3名の不合格者、今回は41名に対し10名の不合格者が出ました。各行程に於ける審査結果の内容が記された採点表は事務処理の時間的都合で後日郵送されることになりましたが二段位の認定証は頂いてきました。振り返ると運が良かったと云うことでしょう。一年後は三段位の受験資格が出来ますが今のままでは到底おぼつかないと実感した認定大会でした。・・・・つづく

(参考)
喜多方市  喜多方観光ガイド  飯豊とそばの里
(山都町は2006年1月、市町村合併により人口約57,000人の新・喜多方市となりました。)

全国麺類文化地域間交流推進協議会


三年目の蕎麦打ちは二段位の認定で終わりました。初心にかえり基本を忠実に打つことを心がけたいと念じてます。
先ずは取って置きの丸抜き(自家栽培)を挽き、美味しい蕎麦を打つことから四年目をスタートさせる予定です。



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