蕎麦打ち奮戦記


◆繊細で優しい気配りの蕎麦打ち

自宅からほど近い和食レストランの片隅に一本の枝垂れ櫻があります。いつもは気づくこともなく通り過ぎる光景ですが満開の季節になると毎年「達磨・高橋名人の手打ちそば会」が開かれます。
そば好きならば誰もが、一度は食べたいと願い、そば打ちなら間近で技を鑑賞してみたいと思う高橋名人の蕎麦。
時期的な事情と平日開催と云うこともあり過去に一度も参加できませんでしたが今年は直前になりお昼でしたら時間が取れるようになり急遽お願いして参加させていただくことになりました。

打ち始めが午前の11時の案内でしたからその時間にお伺いすると既に準備が整い、手のしの作業に入っており神妙な面もちの見学者が四人いらっしゃいましたので一声かけ見学の仲間入り。
過去に二度名人のそば打ちを見たことがあります。そば祭りとデパートでの模擬店でしたので時間を掛けて見ることもお話を聞くチャンスもありませんでした。

お弟子さんの役割や名人のリズムはその時のものと少しも変わりません。
今回のお手伝いをするお弟子さんは横浜・小嶋屋さんと逗子のおかむらさん。どちらも評判のお蕎麦屋さんですからそのお二人の様子を伺うだけでも勉強になります。他に若い修行中のお弟子さんがお二人。
名人の手打ちの状況とタイミングを計りながら木鉢はお弟子さんが進めます。会食が始まる正午までの一時間ほどで5玉・10kを打ち終え引き続き数玉を打ち続けていました。









「お客様は、僕のそばを食べに来てくれるのだから、僕が打つ。」
高橋さんの情熱はこの一語にあります。優秀なお弟子さんが多数いて任せても良い状況でも必ずご自身が打ちます。
道具一揃えに器類数十人前、汁とそば粉等々を車に積み込んでステアリングを握り北は北海道から南は沖縄まで1年の3分の1はそば会やイベントの為全国を旅します。その気力や体力も凄いものです。
以上のことは蕎麦仲間の話でもよく語られ雑誌などでも紹介されていますがそれらを間近で見て取ることが出来僅かの質疑と会話から察することが出来たのは何よりの収穫でした。

美味しい蕎麦を打つ条件の一つに無駄のない手打ちを短時間に仕上げることが上げられますが今回特に感じられたのは一分の隙もない気配りで麺帯を操り来客への応対をされていたことです。
指先まで研ぎすまされたように神経が張りつめた両手はしなやかに道具と一体となり打たれた美しい蕎麦が舟へ移されます。
釜前は小嶋屋さんとおかむらさんが担当されてたようですがこの時期としては最高の色味と香りで汁との相性も良く本当に美味しいお蕎麦でした。









Tokyo蕎麦塾で何度かそば打ち教室を開いてもらった永山寛康さんと八兵衛親方(町塚延夫さん)も高橋さんと同じ故・片倉康雄氏を師匠としますが全てに繊細で気配りの行き届くところとパワフルさは共通して優れているところだと感じた一日でした。(2007.04.10) つづく

参考 翁達磨



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