蕎麦打ち奮戦記

◆進化する自前の道具[道具の改良 三作目の打ち台] 2006年

理にかない気に入った道具でも時間の経過と共に改良を重ね変化するものもあります。
また一方では使い込むほどに手放せなくなる不変の道具もあり、それはそば打ち憧れの道具となります。
重量感のある無垢の木鉢や本格的な打ち台、石臼など一生ものになる一品は喉から手が出るほど欲しくなり自作も試みたいところですが作業場や時間的な制約、それ以上に収納場所の問題があり当分の間はお預けです。
過去に自作した道具の中で一度も使われないままお蔵入りしたものや僅かの改良で使い勝手が良くなるものを改良してみました。


■ 木鉢台
一昨年の自作木鉢台は実用的でなく一度も使うことなく解体しましたのでそれに代わるものを作ってみました。
造りは以前の物と同じ考え方で使い勝手同様に収納や移動に便利な構造にしますが重量が軽く力の掛かる捏ねの作業時に台が安定しない欠点があります。
それを解消するため足元に体重を掛ける平板を取り付けてみました。
円形にくり抜いた天板は木鉢を安定させ、木鉢サイズの変化にもある程度対応できる利点もあります。



■三作目の打ち台
進化する自作の道具でご紹介した打ち台は出張そば打ちや自宅でのそば打ちと日常的に活躍しているとても使い勝手の良い道具の一つです。
これを更に進化させるとより優れたものになるのではと考え組立をより簡単にし時間を短縮させることと安定感を出す工夫をしてみました。


その為にはパーツ点数を減らし、パーツの接合方法を変更する必要があります。
棚板を除く部材は桧材に統一。パーツ点数を3点減。パーツ間の接合に使用していたボルトを無くし、ダボのみの接合とします。
上棚は脚に蝶番で取り付けました。これで組立に要する時間を大幅に短縮でき、より簡単になります。
また脚を40×40mmにサイズアップし、中棚のサイズも大きくしたことでのし板を含む総重量は3.5k増え15.5kとなりましたが意匠的にも安定感が出てきたようです。
(参考)
材料内訳(のし板除く)
[脚] 桧角 40×40 L=900 4本
[繋ぎ板材] 桧板 90×900 T=12 10枚
[棚板] シナ合板 900×900 T=9 1枚
[頬杖]  桧角 15×15 L=900 1本
[その他] ラミン丸棒 木ネジ 蝶番

[追記]
組立に要する時間が短縮され効率の良い蕎麦打ちが出来るようになりましたが木材の性質上、力が加わったとき接合部に僅かの緩みが発生し、ほんの少し左右に揺れが出ます。
木鉢作業の時は殆ど影響ありませんが伸し棒による微妙な厚さを揃える作業では気になります。麺棒を左右に使う動作は殆どありませんが前後の動作に於いても接合部の緩みが影響し揺れを発生します。
その解消方法としていろいろ考えられますがここでは四隅の脚と繋ぎ材にダボで火打ち材を取り付ける方法を取ります。これで当初の目的通り金属金具を使用せず組立に要する時間にも差ほど影響を与えず台の揺れを消すことが出来ました。



■包丁の柄
そば打ちの最後の行程となる切りの良し悪しは包丁の材質や形、重量、柄の握り具合などが多分に影響します。どちらかと云うとあまり得意でないところです。
柄を変えたら少しでもそれを解消できるのではと考え造ってみましたがとてもデリケートで微妙な加減の具合が見いだせないでいます。
画像の包丁は柄の金属部分が大きくそれを覆うような造りにしましたが握りの位置が微妙に高くなります。
加工しやすい素材を選択すれば造りは簡単です。ポイントは柄と包丁を固定するピンを正確に取り付ける為二枚の型紙を作ります。
まず最初に包丁の柄の金属部分を型取りしそれを板材に写し、次ぎにそれを覆うように外形を決めるもう一枚の型紙を作ります。それを先程の写しに重ね合わせて型を取りますが型紙の正確な位置合わせは二枚のピンの位置を合わせることで可能となります。
加工の最初はピンの位置を正確にドリルで穴を空け、その後に外形に沿ってジグソー又は糸鋸でくり抜いたものを二枚作ります。次ぎに柄の金属部分の外形に沿って厚みを計りながら彫刻刀で彫り込み、柄の納まり具合を確認します。内側の彫り込みが完成した段階で竹のピンを取り付け、柄の部分だけを重ね合わせた状態で握りの大きさや全体の型を決め余分なカ所を切り出しナイフで削ります。
それを包丁に取り付け握りの具合が確認できたらサンドペーパーで仕上げて完成です。
素材は癖のない加工しやすいシナの版木を利用してみました。好みで漆やオイルを塗りますがここでは木地仕上げのオイルフィニッシュとしてます。
[追記]
その後 合成漆塗りとしました。

■ 蕎麦を入れる輸送用の容器
近くの知人に蕎麦をあげる場合はトレイパック類の容器に詰め汁は小さな一合ボトルに入れ二人前を一単位としお渡し出来るのですが遠くにいる方へは郵便や宅配便を利用することになります。二年ほど前から時々ですが遠くにいる方へもそれらの手段で蕎麦を送ってます。

打ってからどの位の時間で届くのか、届いたらなるべく早く茹でてもらうように相手とのタイミングを計りながらこちらの準備をします。
届くまでの時間の経過を考慮してそば粉の選択や捏ね方に工夫をし茹で方の説明書を同封します。
蕎麦を入れる容器は汁の容器との兼ね合いも考慮。汁は500mlのペットボトルに入れそれに合わせて蕎麦は6人前を一単位とします。
このサイズに合う市販のプラスチック系の密封容器で3リットルサイズのものがピッタリです。容器の片側に汁が納まり残りの部分に5〜6人前の蕎麦が隙間無く納まります。密封も良く乾燥することもなく冷蔵便で送れば安心です。
ところが容器の下段になった蕎麦が上からの重みと時間の経過と共に出てくる麺の水分で一塊りになってしまいます。
容器の具合と時間の経過は自宅で試してみたのですが輸送中の揺れは予想より激しく狭い容器の中で蕎麦は揺すられ下の方へ押しつぶされ容器の型に沿って変形してたようです。
これでは折角の蕎麦が台無しです。そこで輸送用の容器を試作することにしました。

箱の手前に汁のペットボトルを納め残りの部分に蕎麦を納めます。ボトルと蕎麦の間に仕切り板を付け蕎麦は二段の中箱に一人前ずつ納めることにします。外箱は安価なラワン合板の4mm厚、三六板で6箱取れます。中箱は段ボールを利用してます。・・・つづく


参照
※二作目の打ち台は こちら をご参照下さい。
※四作目の打ち台は こちら をご参照下さい。
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