higashiyama 棲み家「東山」



 ここ日本列島最西端の離島(平戸諸島・小値賀島)に棲み手を待ち続ける古ぼけた一軒家がある。風雨にさらされ、過去の思い出をしまい込み、懸命に幾重もの甍を支え続けていた。棲み家にも人間と同じように寿命がある。その命は人により与えられ、人の手だてにより人間より長い期間生き続けることが出来る。過去、この棲み家はどれほどの人の命をあずかり、その営みを見つめてきたことだろう。
今回、その生涯を終えさせるには忍びなく、財産的価値を度外視し、手間と時間を掛けることにした。  「東山」とはこの棲み家に伝わる屋号であり棲み家づくりの原点がここにあります。


 plan(higashiyama遍歴)

01
参照 移転改築時(大正6年)
 大正初期、現在の地に仏間、次の間、座敷を移転建築し、他の部分は小屋組、小屋梁などの見え隠れに移転前の古材を活用。
二階への階段は中央部と内玄関(通用口)附近の二カ所に取りつけられ、二階は広縁と書院、床の間付きの8帖、他に納戸が2カ所。納戸の一つは3帖の畳部屋つづきの間取りとなっている。
全体的な間取りの特徴は日常的な訪問者や家族が出入りする内玄関(通用口)と上客を向かい入れる表玄関が設けられ、同じような使い方をする便所が大小2カ所づつ設置されている。台所はくどのある床と土間にすのこを敷いた水屋で構成され、床下は薪や炭等の燃料を保管する床下収納があり、勝手口につづく土間の壁際には味噌醤油、漬け物樽と大きな調理道具類を収める収納がある。台所で使用する水は陶器製の大きな水瓶を置き、洗面所ではコンクリート製のタンクに雨水を溜め洗顔に使用した。薪を燃料にする五右衛門風呂は中庭(裏庭)の井戸水を汲み上げ、横引きした竹樋から給水された。
表玄関から座敷までは日本家屋の伝統的な間取りの型であり、玄関、取り次ぎ、次の間、座敷と連なる。
一方、内玄関(通用口)を中心とした間取りは近代的な生活様式が取り入れられ、機能性重視の計画である。内玄関〜茶の間〜食堂〜台所〜勝手口。内玄関〜茶の間〜居間〜書斎〜寝室とつづく。
建て主(祖父、設計者、昭和9年没)は明治後期から昭和初期にかけて外地を含む転勤地で家族と共に過ごしたがこの建物は曾祖母の安住と祖父自身の余生を楽しむ棲み家として計画したやに見受けられる。若い頃、近代漁法の普及や漁具の研究に従事した祖父は自ら烏口と筆を使い和紙に平面図を描いた。それは当時の建築事情を伝えてくれます。

02参照 改修・改築(平成13年〜15年)
 昭和25年頃までは建築当時の姿であったが東南角部屋(寝室)の部屋を解体し、建て主(祖父)の末娘宅(叔母)の増築部分に提供した。昭和36年〜40年頃、瓦屋根の改修と台所の改修。昭和45年頃、東南角部屋の書斎を祖母の隠居部屋とするため便所を増築。昭和63年、洗面所、浴室、便所部分を構造材のみを残し解体・全面改築。同時に台所、洗面所、浴室への給湯設備、便所は簡易水洗とした。
今回の改修・改築は2階部分を除き全般に及んだ。屋根や軒裏、外壁などの構造材と外装部分の改修・補修、木製建具をアルミ製へ交換、内部の床は構造材の交換と畳交換、居間、茶の間、食堂は板張り床に改修、台所周辺の間取りは内玄関と勝手口を繋ぐ土間を廃し、厨房設備を交換した。
外海離島の建築事情は昔も今も厳しいものがある。島内にて産出される建築資材は皆無に等しくそのほとんどが内陸より船便にて搬入され品種も限定される。工事に関わる計画や進捗管理も遠距離によるハンディの壁は厚く、自ずから費用は増大した。
今回の改修・改築は完璧な復元には程遠いが新たな息吹を入れることが出来た。今後は時間的余裕が取れる時期に、今回取り残した箇所を改修し、この棲み家の利用的価値を見いだし、活用したいと考えている。


 棲み家造りの原点higashiyama

 不肖筆者の住まい造りの原点がここにある。
この建築は大正6年に法的登記がなされているが建て主の状況を推定すると明治の末期頃、計画されたと想定される。当時の建築は近代建築が花開き始めた頃で主要都市の公共建築物や一部の住宅で近代的な様式が取り入れられている。その後、盛んになる大正モダニズムに影響を与えた時期です。建て主は古い家を移転建築するかそれとも当時の先端をいく洋館造りにするかを検討したふしがある。建て主が描いた和紙の平面図は筆者が二十歳の頃、祖母から託されたものだかその平面図と一緒に洋館造りを示す青焼きの設計図が同封されていた(古い家に興味のない頃とは云え当時の建築事情を聞いておけば良かったと悔やまれてならない) 洋館造りを断念したかどうかは定かでないが建て主は古くから伝わる家と新たに造る部分を見事に融和させ建築した。中央部より西側半分が古くからの部分で玄関、取り次ぎ、次の間、仏間、座敷がそれにあたり、日本古来の作法やしきたりを主ずる間取りとなっている。それに相対した東側の部分は日常的に必要な居室が配置されている。その部分の建築様式は旧来の日本家屋と何ら変わらないが間取りの構成は現代的で水回り部分では機能的な設備が施されているのが見てとれる。客人を迎え入れる部分と日常的な生活部分、家族のプライベート部分が東西と1〜2階部分で見事にゾーニングされ、更にそれぞれの目的に叶った前庭が配された。


 higashiyama album

次の間前庭の石灯籠と手水鉢
 garden
  建築当時の姿を残す石灯籠と槙の木

01 表玄関 (南面道路より)
02 玄関前庭  
03 次の間前庭 (1)  
04 次の間前庭 (2)
05 築山西
06 築山北


東面全景
 outside 
 長い年月、屋敷の全景を見通すことは不可能であったが周辺環境の変化に伴い状況は変わる。

01 東側外観 (東面道路より)
02 通用口





座敷広縁軒裏
 details 
  匠の技は今また蘇る。


01 次の間広縁軒先
02 座敷広縁軒先 (1)
03 座敷広縁軒先 (2)





次の間より座敷を望む
 indoor
 
  今もなお健在の次の間と座敷(推定、築150年) 対照的に時と共に変化をとげる台所


01 書斎 (書斎→隠居部屋→書斎)
02 居間
03 食堂兼台所 (1)
04 食堂兼台所 (2)
05 次の間 座敷


やまぶきの花
 etc 
  小規模建築と云えど改修改築に掛けるエネルギーは大きく、賑わいの現場に微笑む山吹。


01 改修前外観 (1) (東面道路より)
02 改修前外観 (2)
03 改修前外観部分 (1) (台所軒先)
04 改修前外観部分 (2) (玄関袖壁・軒裏)

05 改装前内観 (1) (茶の間 食堂)
06 改装前内観 (2) (居間)
07 改装前内観部分 (1) (勝手口土間収納)
08 改装前内観部分 (2) (書斎)
09 改装前内観部分 (3) (座敷縁側天井)
10 改装前内観部分 (4) (玄関袖壁・天井)









11 改装前準備 (1) (内玄関土間)
12 改装前準備 (2) (内玄関土間)
13 改装前準備 (3) (玄関先)
14 改装前準備 (4) (玄関先)

15 改装中 (1) (台所)
16 改装中 (2) (座敷屋根)
17 改装中 (3) (座敷屋根)

18 前庭のボケの花
19 前庭の山吹の花

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